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《読書》田中達治『どすこい出版流通』ポット出版



●〔44〕田中達治『どすこい出版流通-筑摩書房「蔵前新刊どすこい」営業部通信1999‐2007-』ポット出版 2008(2009.06.01読了)〈2009047〉

○内容紹介
機能している倉庫はキリリと美しい。本の物流と営業のシステム化に心血を注いだ営業担当者のストレート・トーク。
筑摩書房元取締役営業局長の名物コラム
●出版業界のインフラ整備に尽力した、故・田中達治氏が軽妙につづる「出版流通思想」
●筑摩書房の書店向け「蔵前新刊どすこい・営業部通信」に1999年~2007年まで掲載されたコラムを収録
●書店、取次、出版社……出版流通に携わるすべての人のテキストに
●「版元ドットコム」の若手出版人有志による詳細な脚注、索引付
田中達治[タナカタツジ]
1950年7月23日千葉県銚子市で生まれる。1976年3月法政大学文学部英文科を卒業。同年筑摩書房に入社。管理部(倉庫部門)に配属。1978年同社倒産劇を倉庫(管理部)で迎える。1980年12月営業部へ異動。千葉、埼玉、北関東の書店営業を担当。1988年課長に昇進。1993年4月営業部次長に昇進。1999年6月営業部長に昇進。「営業部通信」を菊池営業部長から代わり執筆開始。2000年6月取締役営業部長に就任。2001年10月「筑摩書房全集謝恩セール」(再販弾力運用)を実施し盛況に終わる(2002年も実施)。2004年10月組織改編で取締役営業局長就任。2007年7月病気療養に専念するため取締役を退任し顧問に就任。また、長年にわたり業界インフラ整備にかかわる。2007年11月23日死去

 面白く読むことができました。志をヒシヒシと感じました。

「役に立つ物流講座は今回でおしまい」▼2003年11月
 あまり役に立たなかったかもしれないが物流講座は今回でおしまい。私が筑摩書房に入社したのは27年前になるが、配属は管理部(現サービスセンター)であった。思い出すたびに吹き出してしまうが、恐ろしくボロボロの倉庫だった。ボロっちいだけではなく汚かった。台風が来ると、ボロ布を担いで壁をよじ登り、雨が吹き込む隙間にねじ込んだ。夏は気温が50度を超えた。汗でびしょ濡れになったうえに埃が付着し、朝からたちまち無残な姿となった。そんな環境でシャワーもなかった。トイレは汲み取り式で鼻が曲がるくらいの悪臭が漂った。冬は悲しいくらいに寒かった。力仕事が多いので厚着をすると風邪をひく。ピッキングが遅くなるので手袋はしなかった。裸の手はひび割れるし、直し本作業ではアート紙が容赦なく皮膚を裂く。フォークリフトはあったが在庫は野積みで手渡しが基本。瓦職人のように2階まで10冊梱包を大量に放り上げたものだ。当時の大宮市櫛引町は工場などの施設のほかは街を潤すものがなにもなく、残業の空腹を慰めるのは延びた出前のラーメンだけだった(悔しぃけど旨かった)。そして給料だけは高かった。
 物流システムが出版経営に貢献するなどとは、だれも本気に考えてはいなかったのだ。一度だけ編集部の先輩社員と新宿の出版業界クラブに同伴したことがある。私だけジーパン姿で浮いていた。高校生のころ本を読んだことのある作家が綺麗な女に囲まれて上品に酒を飲んでいた。小説は地を這うようなテーマだったけど……。先輩が真っ赤な顔をして「君も将来は編集に上げてやるから今は我慢しろよ」などとほざいた。「俺のガマンは仕事ではなくてオマエだ」と思ったがもちろん黙っていた。そしてこの会社は本当に潰れるかもしれないとも思った。200人を超える高給取りを抱え、高級酒を浴びるように飲み、仕事としての物流を賎視し、だれひとりその仕事を買って出ず、唯一の金のなる木を野晒し同然のまま放置していたのだから。
 入社して2年後に筑摩書房は倒産した。四半世紀が経過して社員の給料は業界水準がやっとだが倉庫に昔の面影はない。新人社員には倉庫の無残な返品の山を見せるべきだという人がいるが、それは間違い。機能している倉庫はキリリと美しいものだ。見せしめや戒めの対象となる倉庫ならばその会社は業務全体を見直したほうがいい。(pp.108~110)


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  1. 2009/08/03(月) 04:42:54|
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